GoogleやYahoo、Microsoft、Askがこぞって狙う Feed APIとはどんな意味を持つものか

職場の後輩が、忘年会おわって今年の仕事も無事に納まった後だというのになんか問いを投げかけている。

Google Feed API公開って重要か?
リーダーの機能を解放するって方向なのかな。それは全く魅力を感じないんだけど、何かいい事あるのか?

つい考えちゃったので書いてみるよ。

おれは重要なことだと思うよ。でも、それは開発者にとってではなく、Googleにとって。もしくはインターネット業界にとって。

RSSアグリゲーターのAPIが果たす役割

たぶんGoogleリーダーはむしろ重要度が低下したんだと思うんだ。

RSSリーダーアグリゲーターと呼ばれてるもののうち、パーソナルなアグリゲータ。)のAPIというのがどういうものかというと、例えば確かBloglinesAPIとかで実現されている機能は

  • 購読しているフィードの情報が集約される(OPMLと同等)
  • 記事の既読、未読が集約される

こんな感じだった。これがあるおかげでBloglinesで購読しているフィードは、例えばFeedDaemonとかHeadline-Readerと同期ができるので、むしろBloglinesでは読まなくてもいい。

それと同じことで、Bloglinesと同等の機能を持つAPIがあると、普段は操作性のいいデスクトップアプリで読んでおいて、出張先やネットカフェではWEBアプリで、時にはAPI使って開発されたケータイアプリで、みたいなことができるようになる。

こうなると、むしろGoogleはいま世にあるリーダー的なUIは自社で持たなくてもよくなる。それがあの中途半端なRSSリーダーの背景にあったんじゃないかな、とおれは見てる。

RSS」の普及とAPIとの関係

それから、いまのRSSリーダーのような、「読み手が情報を、かなり能動的に選択して購読する」スタイルは、たぶん普及率はあまり伸びない。これもAPIの持つ意味を大きくする。

いまの「購読」みたいな感じではなくて、例えば、どちらかというとニュースポータルみたいなところに、知らないうちに自分のよく見るニュースソースが登録されてて、、みたいな方向になるだろう。(Google Desktopがやるアレだ。) だっていまのRSSリーダーの「RSS登録」という作業を、ブラウザとOSとポータルの違いもわからない層が使いこなせるとは思えないし。

あくまでコンポーネントとしてのRSSリーダーが、ポータルに、デスクトップに、SNSに、グループウェアに、ケータイに、冷蔵庫とか*1に、埋め込まれていく形で、普及するもんなんだと思う。

Feed APIがあることで、そうした個人が接触するすべてのRSSリーダーコンポーネントを統合的に扱うポジションに立つことができる。Googleなら、冷蔵庫とのコラボぐらいはやってのけるだろ極論。

Googleが他社との比較のなかで立つ位置、なにを狙っているか

もちろん、

  • MSのAPI(OS上に実装)
  • GoogleAPI(インターネットの向こう側に実装)
  • YahooのAPI(〃)
  • BloglinesAPI(〃)

が並立するわけだけれど、Googleは他の局面での優位を生かすことができる。

Googleはオンラインでの(MSの言う)3大行動のうち、

  • ブラウズ(閲覧)
  • サーチ(検索)
  • サブスクライブ(継続的購読。もうメールもここの扱いでいいんじゃないか。)

サーチに強固な足がかりがある(日本ではそうでもないけれど)。あたりまえのようだけどこれが最大の強みだ。

ここに(他のツール上ででも何でもいいから)サブスクライブされたフィードやニュースを表示できたら、やっぱり消費者のGoogleへの接触時間や重要度は大きくなるはずだ。とりあえずなんか探すついでに自分の好きなものが厳選されたニュース見れるんだから。これをするにはどうしても「その人がどのフィード、ニュースを読んでいるか」を知る必要がある。だから、Feed APIなんだ。

Googleはサーチ以外の機能追加には慎重だからそういう方向はないだろう」という見方もあるが、それは間違っている。あのGoogleが、その核たる検索ページの右上においた機能はなんだ?  OrkutでもなくBloggerでもなくPicasaでもなくFroogleでもなく、ポータル風画面作成機能とも言える、パーソナライズドじゃないか。

GoogleはYahooと違って自社でコンテンツを持たない。であるにも関わらずGoogleの野望は「ただの検索屋」ではなく「あなたのための世界政府」「万能エージェント」だ。Feed APIから情報を持って来れるなら、個人の関心のすべてをパーソナライズドに集約できる。それこそ、冷蔵庫のドアで読んだ最新レシピの情報までね。そこを見据えているからこそ、パーソナライズドがあの位置にあるんだと思うよおれは。

GoogleAPIは開発者へもたらされる自由ではなく、むしろ抑圧

Google Feed APIのポイントは、それを使ってなにを開発できるかというより、既存だろうと今後出てくるものだろうと「リーダー」的な全てのものが「Google Feed API」に対応しないといけないという消費者*2からの圧力にさらされる、というところにあると思う。「Googleで読めたら消費者は便利だろう、消費者もそれを望んでいるよ」みたいな。そして対応すればするほど Googleが強くなる。その意味で、GoogleAPIは開発者へもたらされる自由ではなく、むしろ抑圧だとも言える。

でも、おれはそんな野望もってるやつ、嫌いじゃないよ。そういう考え方、危ないのかな。ヒトラーさんも支持されてあの位置についたんだし。

*1:冷蔵庫に情報配信ってのは、主婦向けメディアとしては強いよな。インターネット冷蔵庫が活躍するのはこれからだw

*2:「消費者」って単語は、生活している人間の一面しか見ない限界があるとかで「生活者」と言い換えられたりするけれども、ことオンラインにおいてすべての人間は「情報の消費者」となる。その意味ではこの文脈では「消費者」でいいと思う。