ボットによって開かれる「雑談市場」と料理
会社で、ボットについてのディスカッションがあったので考えをまとめたことがある。
【コラム】食品・飲料メーカーにとっての「ボット」「メッセンジャー」「AI」のインパクトを、現時点で整理してみる
http://vuzz.com/column/bot
料理の写真メディアを運営する身として、料理をする人が抱える「キーワード化された課題」と「まだキーワードにもなっていないもやっとした課題」の違いはなかなか大きく感じている。
前者は、Howの問題であり、検索によって片付けることができる。
しかし後者は、動機の問題であり、検索により解決しようとしている時点で、課題はすでに顕在化してしまっている。
課題が顕在化している時点で、検索すること自体はそれほど「楽しい体験」ではなくなってしまう。
これを前提に考えると、「ボット」が「キーワード入力」を必須とするのであれば、大したブレークスルーはおきないと思っていた。
そんな折にスマニューに流れてきたコラムを拝見して、料理メディアが踏みこめるボット・AIの課題は上のコラムで考えたよりも大きくなりうるような気もしてきた。
雑談市場という市場は目に見えない。これは既存市場カテゴリの再定義である。…(中略)… そもそも人はなぜ外食をするのだろうか。…(中略)… 友達と話をするために居酒屋に行くという人が圧倒的に多いのではないか。…(中略)… 楽しい時間の大半を占めているのは雑談である。
雑談は全ての広告に優先する。広告業界の規模は4兆円。雑談ほど強力な広告はほかにちょっと考えられないので3兆円程度は雑談で奪えるはずだ。だって広告業界は必死で「人々の話題になる」「記憶に残る」ということを目指しているのだ。その全ては「買わせるため」である。
ビデオデッキ市場を持ち出すまでもなく、コミュニケーションに関連した技術は、アダルトによって牽引される強みがある。
アニメや創作物を相手に疑似恋愛を楽しむ行動は、すでに存在している。ボットによる会話の精度が上がれば、そうしたキャラクターと自分だけの日常会話を続けられるというサービスが現実化する。
折しもキュレーションメディア騒動の裏に「アダルト業界で培われたボット」の存在が示唆されていたが、ボットが紡ぎだす言葉と人間が紡ぎだすそれとは、既に区別することが難しい領域まで来ている可能性がある。
家族や友だち間の会話にアシスタントボットがまぎれこんでくる未来が近いとしたら、そこでは確かに「雑談」は広告機会となる。
「検索」という顕在化した課題を解決して、ネットにおけるビジネスの扉を開けたのがGoogleでありクックパッドであり、だとすると、「検索の手前」にあるもやっとしたものをつかまえられるようになれば、もう少し面白いビジネスの展望が見いだせるような気がしてきた。
SnapDishが黙々とため込んでいる料理の「会話」データとそのビジュアルに、もっと面白い機会を見つけてあげたい。